――――――――【謝罪する逢魔時】―――――――――




自分から突き放したくせに。
後悔して全て元に戻るってンなら、俺は一生分の後悔を此処で使い切ってやろうか。
自分から拒絶したくせに。
少しの平穏さえ手に入るなら、俺は他には何もいらない。そう思っていたのに。
アイツと一緒に居る時間が、どうやら長すぎたみたいだ。
嗚呼、人間って奴ァどうしてこんなに欲深いんだろ。







結局昨日は一睡も出来ずに近くのホテルに駆け込んだ。
あの後、部屋を飛び出していったりゅーたを追いかけたい衝動に駆られたが、今の俺が追いかけて一体何になるというのだろう。

血で汚れたこの手で、アイツに触れて、涙を拭って、抱き寄せて、さっきのは全て嘘だとでも?

…馬鹿馬鹿しい。




女々しくも思い悩み一人で一夜を明かした事実にはあえて意識せず、のろのろとした動作で服を着替える。
俺の心境がどれだけ沈んでいようと時は流れ、そして今日ももちろん仕事がある。
気は進まなかったものの、ジィさんを怒らせるわけにもいかず、重たい足取りで俺は部屋を後にした。



ポケットから振動を感じ、携帯を取り出すと白いライトが光るディスプレイに表示されていたのは、元恋人。
徐に通話ボタンを押せば懐かしい声が聞こえた。






『もしもし?ぁ、KKさんですか』
「…嗚呼、お前からかかってくるなんて珍しい、な」
『あれ以来からだから結構なります?…でも俺よくKKさん見かけますよ〜西新宿で』
「ストーカー…」
『ち、違いますって…!まったく失礼だなぁもう』
「まぁ良いよそんなのは。んで?…用件を言え。用件を」
『嗚呼、そうでしたっ!』




電話越しのマコトの声に混じって、笑い声が聞こえた。
少し控えめに笑う、特徴のある、声。





『…勘の良い貴方なら、気づいてくれたと信じてますから』
「…何言ってやがる…っ!」
『必死になって探せば良いんです。…元恋人の好でこれくらいの悪戯は許してくれますよね』
「ちょっ…おい!マコ!…待…っ」



一方的に掛かってきて、一方的に切られた電話。
いきなりの事に頭がついていかないけれど、数分をかけてそれは確信に変わる。








今、リュータはマコトと一緒に、居る。








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いつまでも解決しないくらいなら、偽りの犯人を仕立て上げよう。
全て光ある未来に繋がるなら、どれだけでも手を汚してやるさ。
              
              1.18  七弦
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