――――――――【無題】Cohabitation―――――――――


俺は今 ちゃんと自分の家に帰ってきたハズだ。
「201号室」…ホラ見ろ。間違ってなんかいない。

なのに、だ。


「何でお前が居ンだよ…!?」

施錠を確かめたハズの部屋で寛いでいたのは
一際目を引く金色の髪。黒色のツナギは所々汚れている。
俺の仕事仲間で、先輩でもある“慧”だった。
だが先輩だなんて呼んでやらねぇっ。
逢う度にちょっかいをかけてくるアイツは俺の苦手な類だからだ。

「しょうがねぇダロ?Gさんの言付なんだしさぁ」
「仕様が無いって何だ!此処は俺の部屋…っ」

…?
ふと感じる違和感に辺りを見回した。
昨日までは無かったであろう品が数点。
増えているのに気づかないほど俺も馬鹿ではない。

「どういう事だよ…?」
「まぁ茶でも飲んで落ち着け。狭いけど」
「此処は俺ん家だよ!!狭いって何だ。狭いって…」

手渡されたお茶を飲み、少し冷静になって考えてみる。
と、そういえば今日の仕事の帰り…
『今日から暫くお前の家に慧が邪魔すると思うがよろしく頼む』
などと言うフザケた事をGさんが言っていた気がする。

「あああぁ…適当に返事してたアノ時かああぁああ!!」

今更思い出しても時既に遅し。
Gさんの部下である俺達にとって、Gさんの発言は絶対なのだ。
部屋にはアイツの荷物やら何やらも運び込まれてしまっているし、
返事をしてしまった今からじゃどうしようもない。

「そう嘆くなよ。炊事洗濯やってやるよ?」
「…お前、元の家どうしたんだよ?確かアパートだったんじゃ…」
「工事中。あのアパートもボロいしさ色々大変なんじゃねぇ?」

あっけらかんと言い放ったアイツを見て殴りたくなった。
けれどもう決まってしまった事なら男らしく受け入れようじゃないか。

「…一週間だ」

アイツの眉間に指をつきつけ、宣言する。
いくら工事だといっても一週間もあれば終わるだろう。
もしもそれ以上かかったとしても俺の家に置いてやる義理は無い。
…いや、無いワケでは無いがアイツと一緒なのは何故か嫌だ。

「一週間以上たったら出てってもらうからな!」

「―…」

瞬きもせずに送られてくる視線に、思わず目を逸らしそうになった。
此処で目を逸らしたら負けだ…っ!
負けじと睨みをきかせれば、何が面白いのかわからないけれど
アイツは声を荒げて笑い始めた。

「っはははは!!最高。お前最高!」

「ぇ?」

「…っあぁ…分かった!一週間で良い。だけど一つだけ条件だ」

しばらく腹を抱えて笑っていたアイツは急に真剣な顔をして
条件をつけたいと言いやがった。
…俺も鬼じゃあない。ひとつの条件くらい聞いてやるよ。

「何だ」

「一週間以内にお前から『好き』って言わせてやるよ」

「…どういう事だよ?」

「だからぁ出て行って欲しくないっていう状況にすれば良いんだろ?」

「俺がお前に惚れるワケが無い。むしろ追い出す」

馬鹿言うなよ。俺がアイツに「出て行かないで」って泣いてすがるって?
男同士とかいう問題よりも、相手がアイツって所に問題がある。
…冗談! 追い出すならまだしも引き止めるなんて。
ありえないと思いつつも、約束は約束だ。

「わかった。じゃぁ一週間以内に俺に引きとめさせたら
 お前は此処に居ても良い。じゃなかったら一週間で追い出すからなっ!」





そうして期間限定の俺達の同棲…もとい同居生活が始まった。 


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続き物パート2(笑
簡潔に完結出来ると良いのですが。

              
              11.1  七弦
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