―――――――――【無題】Fireworks――――――――

遠くで花火の音がする。


「…見に行くか?」

勝手に部屋に居座り、床に仕事道具…半紙やら筆やらを広げている
水色頭の侍…六に向かって声をかけた。
周りに散らばる書き殴られた言葉達。
荒々しい書体からは、明らかに集中できてない様子が見て取れる。
というか。
これ以上、俺の部屋を大量の半紙などで汚して欲しくはないんだが。

「…行かない」

筆を動かす度に揺れる水色の頭は、振り向きもせず
半ば、ムキになっている様にも見える。
どわぁ!!とか、うっ…とか。
墨がこぼれたり思い道理の言葉を表せなかった度に示す反応を
俺は雑誌を読みながら横目で傍観する。
遠くでは相変わらず、五月蝿いほどに耳障りな音が鳴り響いた。

「本当に行かねぇの?」

「行かないって言ってる」

「…あっそ」

結果が見えている押し問答を繰り返す。
別に花火なんかにたいした興味は無いけれど
行き詰ってるであろうの六の気分転換に とか
夏の最後の思い出に とか。
言い訳じみた理由は何の約にも立たず、
このままじゃ何も進まない、と思い始めた頃。

「…静かになったな」

「終わったんじゃねぇの?」

窓から外を見てみるけれど、ただ暗闇が広がるだけ。
周りは先ほどと打って変わって静寂に包まれた。
さっきはあれほど五月蝿く感じた花火の音も
今では少し、名残惜しくも感じられて。

「やっぱり見に行けば良かったな」

静けさの中、六に問えば

「俺を置いて一人で行けば良かったじゃねぇか」

と、悪態をつかれたけれど。

「そうだな」

「…できないくせに」

「まぁな」

俺が一人で見に行ったって何の意味も無い事を
六は知ってるだろうから。


「けぇ!出来た!」


【静】


小さいながらも存在感に満ちた一文字は
今の静けさが、少なからず寂しいだけのモノではないと
教えてくれた気がした。   


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六はきっと多くは語らないけれど。
けっけにはきっと伝わる何かがあるんじゃないかと(ぇ

            8.13 七弦
 
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