―――――――――――【無題】Snow:side K―――――――――――



傍から見れば、只の変質者。

「何してんの」

もう三十路過ぎた良い大人が、道の真ん中で。

「死体ごっこ」

真っ白な雪が身体に降り積もる感覚がリアルに伝わる。

「んー…大丈夫?」

真っ赤になった鼻が少し痛くなってきたけれど、コート越しに寒さは大して感じないみたいだ。

「寒くはネェよ」

無駄にデカい体躯が道に寝そべる姿は余りにも異様。

「ううん、頭が」

悪びれもなく、ただ淡々と。

「アァ…うん、そっちか」

咎める事もなく、ただ切々と。

「楽しい?」

笑顔なのにも関わらずマフラーで首絞めるの止めてくれないか。

「…っぐ…」

動こうにも体が動かない。このままお前の手で朽ちるのもまた一興か?…そんな訳ネェだろ。

「そろそろ起きたら」

荒い息を整える。力を入れようにも入らず、だらしなく延ばした四肢を弄んだ。

「…起こしちゃくれないんだ?」

寒さでなのか、それともやるせなさからなのか、引きつる口元を歪めながら問う。

「先、行ってるから」

ザクザク、無情にも過ぎていく足音が切なく周りに木霊した。

「…スミマセン。手ぇ貸して頂けマセンカ」

降参してやるよ。お前なら本気で行っちまう事だろうから。

「しょうがないなァ」

降りしきる雪がいつしか雨に変わり、周りの雪を溶かし始める。背中が水に浸る感覚に震えた。

「悪ィな」

差し伸べられた手を握り返すと思ったより細く冷たい指先に、僅かながら罪悪感を覚える。

「…良いよ、別に」

何処までも白い世界。そっぽを向いた耳が紅く染まっていたのは、寒さの所為にしておいてやろう。

「じゃ、行こうか」
「そうだな」



身が切れる程の寒さの中、待っていてくれた愛しい人。
歩き出す道。ふと後ろを向けば黒く染まる雪。
溶け出した様々な色が混同し、淀み、朽ちていく色。

白く綺麗なままでは居られないのだと、痛感した。






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アイツと居ると飽きないよ。
スリルもハプニングも、もれなく連れてきてくれる奴だから。
              
              12.21  七弦
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