―――――――――【無題】Daily life――――――――




「けぇは髭、剃らねぇの?」

起き抜けに。
人の顔をじっと見てやがるかと思えば。
コイツはそんな事を考えていたのか。

「…剃らねぇよ。っていうかさっさと其処どけ」

目の前をうろちょろと走り回る神様を避けると
眠気に足をよろつかせながらも洗面台へ向かう。
その間も、神様はずっと「なんで?どうして?」と問いただした。

顔を洗い、適当に髪をまとめながら台所へ立った。

「エム、飯は?」

「まだ」

「…何が食いたい」

「んー…何でも食う」

「あいよ」

冷蔵庫から卵を取り出し、目玉焼きを作る。
フライパンにウインナーを転がす間も、
トースターにパンを入れる間も、
神様は何かを言いたそうに後ろにくっついたままだった。

料理が出来ていくにつれて食欲を掻き立てる匂いが鼻腔を擽る。

「お皿、いる?」

「2枚な」

ぱたぱたと軽い足音を立てながら皿を運ぶ神様を横目に見ながら、
俺は焼きすぎたトーストにジャムを塗った。



「「いただきまス」」


いつの間にか、食事を共にするのが習慣になっていて。
何故か、狭いベッドを共有していて。
不思議な事に、…それを嫌だと思っていない、俺が居て。

どーしたもんか、と。


「…さっきの」

「ぅ?」

「剃る剃らないに理由なんかねぇけど」

「そっか」

「何でンな事聞いてきたんだ?」

髭がどうとか。
あの時は覚醒を促すのに必死で、深く意味は考えなかったけれど。

「ん。別に…ただ気になっただけ」

ふぅん、とそっけないフリをしながらトーストに噛り付く。
何故、いきなりそんな事を聞いたのか正直かなり気になるんだが。
別に故意に伸ばしていたワケじゃないけれど、そろそろ伸びてきたかな。
ふと、顎に手を当ててみる。


「そろそろ、剃るか」

「ヤダ!!」

目の前で目玉焼きを頬張っていた神様は。
何故かソレをめいいっぱい否定しやがった。

その様子が面白かったため、軽く笑いを堪えながら、

「…何で?」


神様は少し呆けた顔をして。その後。


…くそう。赤くなるなんて反則だろうが。

「…カッコいいもん」


目の前の神様から小さな声で主張された内容に、
不覚にも、俺が赤くなってしまった。





いつの間にか住み着いた、

小さな小さな 神様の為に。


今はまだ、このままで。




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お髭があってこそのけっけですが。
もちろんお髭剃ったけっけも大好きです(何言ってんだ。

              8.6 七弦
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