―――――――――――【無題】Snow:side R―――――――――――



細く延びた四肢を、真っ白に積った絨毯へと静かに預け、当然のように目を閉じた。

「何してんだ」

背筋から身体全体へじわじわと蔓延する寒さが手足を麻痺させる。

「死体ごっこ」

悪びれもなく、ただ切々と。

「阿呆か」

咎める事もなく、ただ淡々と。

「うん」

まだ目は閉じたまま。雪の降る音が支配する世界に、唯一響く声だけを聴く。

「寒くねぇの?」

余りの寒さに感覚は奪われ、いつしか痛みすら感じなくなった。

「わかんない」

冷たさも痛みも超えた先に身体が感じる感覚は、感じる筈の無い温かさ。

「そろそろ起きたら」

動こうにも身体が言う事を聞かない。このまま此処で凍ってしまうのもまた一興か。

「嫌」

アンタを困らせたい訳じゃないんだ。どれだけ自分の為にしてくれるか知りたいだけ。

「先行くぞ」

耳を澄ます。躊躇するように足踏みの音が聞こえ、暫くすると遠ざかるであろう足音に心が揺らぐ。

「…起きれないんだってば」

降参する事にしよう。アンタならこのまま本当に置いて行きかねない。

「…最初からそう言え」

降りしきる雪がいつしか雨に変わり、雪とはまた違う冷たさで俺を覆った。

「ごめん」

差し伸べられた手を握り返す。与えられた人の温もりに僅かながら安心感を覚えた。

「馬ァ鹿」

手に力が込められ、崩れそうになるバランスを保ちながら起き上がる。

「…怒ってる?」

奇妙に人型に残る雪の跡は見なかった事にして。

「怒ってネェ、よ。…そんじゃあ行くか?」

「そだね」


空っぽな心に注ぐのは、温かい愛情。
握り締めた手は、離される事の無いままで。





――――――――――――――――++

アンタと俺との違い? それは至極単純な事でしかない。
自分が『好き』か『嫌い』か、只それだけだ。
              
              12.21  七弦
SEO [PR] 爆速!無料ブログ 無料ホームページ開設 無料ライブ放送