――――――――【無題】The death ends.―――――――――


冷たい空気が容赦なく肌を刺す。
凭れ掛かる体は壁との温度差に悲鳴を上げていた。
先ほどまで感じていた生臭い匂いは時が経つにつれて薄れて。
左肩に痛みが走るが、どうなっているかを確認する気力も無い。
ただ淡々と。
床に流れ、溜まっていく赤黒い液体が傷の深さを物語った。
俺にはこんな無様な最期が似合いだナァ…。
冷えていく体、感覚を無くす腕と裏腹に
意識は無情にも鮮明な先ほどの光景を思い起こさせる。
最期かもしれないと言うのに。
段々と鮮明に脳裏に描かれる映像に吐き気が増す。
止め処なく流れる液体は留まる兆しを見せず、
泳ぐ視線の先に、最期まで共に戦い抜いてくれた相棒が映った。
手を伸ばせば届かない距離でも無いだろう。
…っ…。
唯一動く右手を精一杯伸ばすと、指の先にぬるりとした不快な感触がした。
誰の物かも分からない返り血がべっとりとついたソレ”
深い漆黒に光り、手に馴染むまでに使い込んだ大切な相棒。
嗚呼…お前も頑張ってくれたンだよな。
軋む体を限界まで動かす。
腰のポケットに長年の相棒を仕舞うと
震える指でポケットから煙草とライターを探す。
口の端に銜え、ゆっくりとした動作で火を灯せば苦い煙が揚がる。
世間と隔離された静か過ぎる空間。
まるで俺しかこの世界に存在していないみたいだ。
柄にもなくそんな夢見がちな台詞を吐きすてた。

ふらふらと立ち上がるが、諤々と激しい震えが俺を襲う。
こんな処で終わって堪るか…っ!
最後の力を振り絞って一歩、また一歩と足を踏み出す。

外部から閉ざされた小さな一室。
僅かな光と闇に支配されたモノクロの世界で、

小さな雫となって床に落ちる紅は酷く色鮮やかで



俺は静かに 目を閉じた。





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今日という日が昨日になるまで、今日の出来事を悔いて。
明日という日が今日になっても、明日への不安に怯えて。

              
              11.1  七弦
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