神は世界を創る


今 目の前に広がる大地も、空も、空気も。
全ては俺が創りだした。
聞こえはとても良いけれど、俺にとっちゃぁ只のモノでしかない。
もしも飽きてしまったら、存在意義を無くしたソレは
まるで遊ばれなくなった玩具のように簡単に崩れ落ちるのだ。
今はまだ 飽きては居ないだけで。



その男は世界を壊す


居心地の良い世界なんて ありはしないのだと アンタは言った。
だからそんな世界なんて 無い方が良いんじゃないかと アンタは言った。
此処にたいした未練なんぞ無いし 俺の傍にあるのは冷たい闇だけ。
アンタが自由で居られない世界なんて壊してやろうかと思ったけれど、
だけどアンタと一緒に居られるんなら 此処の居心地も悪くねぇと思った。



神の作り出す音を聞きながら


今日も俺は人間界に降り 小さな箱でディスクを回す。
少しでもツマラナイ日常に変化を与えようと 必死な人間はいっぱいいるから。
大音量で流れだすメロディーに耳を傾け 世間から逃れようとする者達。
そんな奴等を見ながら 無心になろうと思うのだけれど 結局は
今頃アンタは何をしてるだろうと 考えるんだ。



男はまた引き金を引く


カチリ 鈍い金属音とともに崩れ落ちるのは、先刻までヒトだったモノ。
流れ出す朱に吐き気を催さなくなったのはいつからだろう。
標的の額に標準を合わせ引き金を引く 一連の動作はすでに身に染み付いている。
俺の手は汚れてる。アンタには隠していても 全部バレちまってるのかもしれない。



神は運命を変えてはいけない


生を創りだすのは俺だけど 未来だって視えているのだけど
その運命を変えてしまうのは掟に違反するんだって。
まったく矛盾してると思う。 でもその方が面白いだろ?
人の命なんて俺にとっちゃぁ一瞬だから…わざわざ変えようなんざ思わないさ。
どうせ 誰一人として俺の死を看取れる奴は 存在しないのだから。
永遠の命ってのも 得な事ばかりじゃあ無いと思う。


男は運命に抗おうとしている


神に祈ったって何もしちゃくれねぇんだと。 ならどうすれば良い?
何とかするしかねぇだろう。定められた道なんて力ずくで向きを変えてやるさ。
流れに沿って早死にしたとして アンタは泣いてくれるだろうか?
俺の為に泣くほどの思い出なんて作れていないかもしれない。
自分の運命に逆らう事が アンタを救う事になるのなら 運命なんざくそくらえだ。



そして男はー…救われない闇に恐怖を感じながら


仕事柄いつも死と隣り合わせ 切っても切れない関係。
死にたくないと 生きていたいと 女々しい事も考えたりする。
いつアンタを独りにしてしまうか分からない。
俺はいつか死ぬだろうけど、アンタはずっと死なねぇんだろ?



そして神はー…必死にのばされた手を見ないフリして


一人だけ特別に寿命を延ばしたりなんてできるハズ無い。
俺にはアンタがいつ居なくなるかだって 視えてんだ。
だけどそれをアンタに言ったり、俺がなんとかしたりはできないから。
アンタと一緒に死ねたならなんて幸せかと思うんだ。




「なぁ、けぇけぇ」
「…何だ」
「お前が死ぬ時は、俺も殺してくれよ?」
「…何、縁起悪ぃ事言ってんだ」
「…」
「…」


「心臓【ココ】を 打ち抜けば 神だって死ねるんだぜ?」

「へぇ…そりゃ初耳だ」


「だから、その時が来たら 殺してくれよな? 俺ぁアンタになら殺されても良い」
「馬鹿言え…俺はまだ死ぬ気なんざ無ぇっての」
「もしもの話だよ」
「覚えてたら、な」





お互い   独りでまた 静かに嗚咽を漏らすのだ。






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人の前で決して涙は見せないんですよ
独りになった時にだけ流してくれるといい(笑

              
              8.1  七弦
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