―――――――――――――――――【恋情と忠誠と反逆】―――――――――――――――――

さぁ牙を突き立てて。
鋭い毒牙を、深々と。
太い血管を目掛けて。
全身に、アナタと言う毒が巡る様。



‐恋情と忠誠と反逆‐



この時間割りになってから確信した事なのだが、月曜日の昼休み直後にのんびりと喋る歴史の先生の授業を組んではいけないと、俺は思う。
「……でね、こーいう訳で騎士の制度がある時代が、このページのココの部分までの話だから〜。それが先週分だけど大丈夫かな〜?」
語尾を伸ばした独特の話し方をするこの先生の授業は、聞いてて判りやすい内容や教科書に添いながらも間に小ネタや雑学を入れてくれるスタイルが楽しい…が。
当人の眠くなる程ゆったりした喋り方と先週分のおさらいなんかを最初に挟むせいか、はたまた先に思った通り我がクラスの時間割編成が悪さ故か。
カツコツと鳴るチョークの音に先生の声。昼休み直後の腹一杯な現状と教室を満たす程良い暖房の温もり。本当、お膳立てはバッチリとしか言い様が無い。


(…マジ眠ぃ…)

(…昨日も昼過ぎまでバイトして、)

(…それから……)


テスト前だからと、必死にノートに向かいながらも、意識はふわふわとしてて。
ついつい、昨晩の事とかの関係無い事を思ったりしてしまう。


(……昨日はあの後、KKさんと待ち合わせて飯食いに行って───)


───そして、うっかりと。
“彼”の事を思い出した所で、俺の思考は勝手に昨日をリピート再生し始めた。



【  …な、リュータ。今の店結構美味かっただろ??】

『…KKさんにしては悪く無かったよ♪』

【ぅ…しては、は余分だっつの。】

『あははッ!』

【ァン、お前。手首どうしたんだよ?】

『ん?……あぁ、何かで擦ったのかな??』

【ちょっとばかし、血が滲んでんな。ヨシ、貸せ。】

『へ?貸せって……ぅわッ!?』




(…人通りが少ない所だからって、人様の手首を舐めやがって……)
昨日の帰りに交わした会話を思い出してしまい、俺は少し照れて俯く。
クラス中のだらけた雰囲気の中で、自分だけが浮いてる様な何とも言えない恥ずかしさに、必死に無表情に努めてみたりして。
(……クソ。)
と、不意に───


「そうだ〜。ある国の騎士は忠誠の誓いとして主君の手首の内側に口付けるんだよ〜。『これより私の命はアナタの物だ』とか示す為にね〜。」

───自分の記憶を覗かれたみたいな話に、俺は慌てて顔をあげた。


「でもね〜、その行為にはもう一つの意味があったんだよ〜。」


鼓動が早くなる。
続く言葉に、つい神経を傾ける。



「手首の内側には大きな血管があって、そこを切れば時として命を落とす事もあるでしょ〜?だからそこに口付ける行為はね〜。『アナタの命まで食べ尽くしたい程、アナタに焦がれてる』って示してるんだよ〜。」


(うわ……ッ、それって…)
先生は呑気にも、「牙を近付け食む様に唇を落とす、イコール、アナタを食べてしまいたいなんて、凄いロマンチックな発想だよね〜♪」なんて言ってるが。
そんな話は、余計に俺の頭ン中を掻き乱すだけで。



‐アナタを食べてしまいたいなんて‐
‐そんなじゃ、無かったんだろうけど‐

‐KKさんになら、別にイイかもなんて…‐




「あれ〜?リュータ君、暑い〜??」

───うわッ!??
「な、なな、何スか?先生っ!!」
急に先生に話しかけられて、心臓が縮こまった。背筋がビシッと伸び、ついでに派手に缶のペンケースをひっくり返したりして。

「いや、暖房近い席だから暑いのかなぁ…と。顔凄い赤いよ〜?」

「だ、大丈夫です!ちょっと眠くなってただけなんで……」
我ながら苦しい言い訳だが、本当の事なんて言える筈もないし。

「ははっ。ご飯後だから眠いのは判るけど、テスト近いんだから頑張らなきゃだよ〜?」

「は、はーい…。」
良かった。そんな言い訳で許されたみたいだ。
俺がペンケースを片付けだすと、先生は後ろの席で豪快に寝息をたててるサイバーを起こしに行ってしまう。
それを横目で見つつ、漸く張って居た背筋を緩ませて。

(畜生、KKさんのせいだ…!)

取敢ず全部の責任はKKさんのせいにしようと思ったりする。
そうだよな。
KKさんのせいだって、うん!

(……ヨシ…今度会ったら、仕返ししてやる。)

KKさんはなんでそんな事されるのか意味不明だろうけど。
説明したら仕返しにならないし。
きっと、やってやる。
そう堅く誓う月曜五限終わりのチャイム五分前だった。




(───手首に噛み付いてやるから覚悟しとけ、あのエロオヤジめ!!)





【END】





アトガキ

ども。何故にいきなりKリュタ?とか言われそうな感じで。遠江デス(笑)

実はぶっちゃけ、この話は後輩の七弦ちゃん&雪乃ちゃんと話してて浮かんだ、二人の好きキャラ同士のカプ話ってだけなんデスがね(微笑)
そんな訳で折角書いちゃった訳だし、七弦ちゃん&雪乃ちゃんのサイトにプレゼント☆してみたり(つぅか押付けてみたり/笑)
返品は不可デス!(キパ)
諦めて貰ってやって下さいにゃ( ̄ー+ ̄)
あと。も一つ裏話で、本当は『恋情に潜む、忠誠心と反逆心についての考察。』と言うのが正式タイトルのつもりだったのデスが、流石に長過ぎたので端省りましたよ(苦笑)
でも哲学的な雰囲気の厳ついタイトルで甘ったるい話って好きなんだけどなぁ…。
まぁ、そんな感じのKリュタ話なのでしたりvvv(^_^)ノシ




―――――――――――お礼++

オフでいつもお世話になっております遠江亞汰留様より頂きました!vv
雪乃んとともにお宅にお邪魔した際に、めいっぱい「ケケとりゅたは良い!」と語った甲斐があるというもn(黙れ

素敵小説ありがとうございましたvvv

              
              12.25UP  七弦
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